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インフレ政策論争についての雑感

国家戦略室への提言「まず、デフレを止めよう~若年失業と財政再建の問題解決に向けて」  勝間和代公式ブログ

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上記の説明について、菅大臣との主たる質疑応答は、以下のとおりでした。

Q1 非常に魅力的な提案だが、それは要は、貨幣発行量を増やし、国債を発行すると言うこと

A1 そうです。モノに比べて、貨幣が足りない状況なので、国債と引き替えに貨幣を発行し、その国債を日銀が引き受けて、市場に供給する。その収入を、環境、農業、介護など、いま投資が必要な分野に投入します。

Q2 日銀に明日からやれ、といったら、やるのか

A2 はい、できます。必要だったら、私も一緒に行きます。日銀は国民から選ばれたわけではないので、迷いがありますから、選ばれている政府のリーダーシップと、今回の署名のような、国民の声の後押しが重要です。

Q3 こういうことを行いたいという声は党内にもなるが、国債を発行を増やすと、利率が上がって問題になるということが自分も含めて、懸念される

A3 すでに実質ベースで見ると、国債の利率はとてつもない高いことを理解すべき。利子率は名目ベースに物価の上昇・下落を合わせた実質ベースで見ないといけない。脱・デフレ対策を行えば、実質ベースの利率は下がる可能性が高い。

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http://kazuyomugi.cocolog-nifty.com/private/2009/11/post-288b.html

 今や「時の人」である勝間和代氏が、民主党の国家戦略室のヒアリングでインフレ政策を提案したことで、ネット上を中心にインフレ政策論争が一挙に盛り上がっている。マクロ経済学をまともに勉強したことがないので、現在華やかに語られているインフレ政策が正しいのかどうかの判断はできない(そもそも私は、経済の専門家と呼ばれる人たちに対して全般的に不信感がある)が、あくまで外野から眺めているかぎり、推進派のほうが明らかに支持できるように思われる。というのは、日銀がインフレを起こせるのかどうかとかいうテクニカルな話ではなく、現在の日本経済の問題の所在に対する認識がより説得的であるという点にある。

 インフレ政策を推進する人たちは、現在の日本経済の根本問題を、若年層を中心とする需要不足に基づく需給のギャップにあると考えている。日本の潜在成長率はもともと高く、一次大戦後のドイツや現在のジンバブエのように、経済制度そのものが崩壊しているわけでは全くないから、ハイパーインフレを懸念する必要も全くないという、そういう理解に基づいている。だから、今の日本で緊急に必要なのは生産性を上げることではなく、インフレによって投資や消費のインセンティヴを高めて需給ギャップを解消することにある、ということになる。

 しかし、インフレ政策を批判する人たちは、要するに企業や労働者に競争力をつけさせなければインフレを起こしても何の問題の解決にもならない、という考え方をしている。だから新しい産業のイノベーションとか、より徹底した規制緩和とか、そうした「構造改革」のアプローチを好む傾向がある。実際批判派は、「現在の日本経済の問題は需要不足にあるからこそインフレ政策に反対する」という議論はほとんどなく、「潜在成長率」を高めることが最優先の課題だという認識に基づいている。

 インフレ政策論争そのものはどこか神学論争的であり、経済の専門家への幻滅感のほうがかえって強まるのだが、推進派と批判派の両者を比較すれば推進派のほうが説得的であることは間違いないように思われる。というのは、批判派たちの日本経済の現状についての認識が、明らかに適切ではないと考えるからである。そもそも、批判派が何を根拠にして「潜在成長率が低い」という危機感を持っているのかが、よくわからない(潜在成長率の国際比較というのがあるのだろうか?)。人口減については容易に条件を変えられるものではないし、技術力や消費サービスの水準も、実感やテレビ・新聞レベルの情報に接する限りでも決して低いとは思えない。日本の労働生産性の低さにしても、労働者の生産能力が低いのではなく、賃金以外のセーフティネットが薄いために長時間労働のインセンティヴが強くなっている、という説明が最も説得力がある。よって、不適切な現状認識から適切な経済政策が導き出されるとは思えない以上、批判派の議論は全く支持できるものではない。

 インフレ推進派の主張は、社会保障を中心とする「増税=再分配」による需要不足解消という私の考えている路線を、金融政策の側から実現しようとするものと理解することができる。いままでインフレ政策にはどこか懐疑的だったのだが、論争(というよりも「言いっ放し」なのだが)が盛り上がってくれたおかげで、インフレ推進派が何を言いたいのかが次第につかめるようになってきたし、デフレの解消が喫緊の課題であることも、今まで以上によく理解できるようになった。なかでも自分の頭で一番納得できたのは、ここで批判的に言及することも多いが、やはり飯田泰之氏の説明だったと思う(「潜在成長率と景気対策の余地」http://d.hatena.ne.jp/Yasuyuki-Iida/20091110

 ただし、テクニカルな面で根本的な問題を抱えている可能性については判断できないので、インフレ政策に無条件で賛成というわけではない。それに増税政策と同じで、「物価が上がる」という素朴すぎる世論に、どう抗していくかが課題となる。特に、ますます日本の世論の中心となる年金生活者層にとっては、むしろデフレによって物価が下がって預貯金の実質価値が上がることの恩恵のほうが圧倒的に強く、インフレ政策の中身を知るほど反発が強まる可能性がある。

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