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社民党のこれから

 山口二郎氏が社民党についてやや辛口に論評している。

社民党のこれから ―― YamaguchiJiro.com

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もちろん、民主党のこれからについて、私は楽観していません。鳩山、小沢、菅、岡田の4人について、私は基本政策を共有できると考えています。しかし、次の世代となると、いささか心もとない感じがします。平岡秀夫など、リベラル勢力も存在しますが、いまひとつ迫力不足です。まして、今回誕生した大量の新人議員が何を考えているのかは、見当がつきません。生活第一、平和主義の路線を持続するためには、民主党の中のリベラル勢力がもっと大きくなる必要があります。

そのためにジリ貧の社民党は何をなすべきでしょうか。残念ながら、社民党は東京の比例代表選挙でも議席を取れないまでに衰弱したことを正面から認めてほしいと思います。今回、現状維持ができたのは、民主党との選挙協力のおかげです。ここで私は失礼を省みず、社民党が民主党に合流し、民主党の左側を強化すべきだと申し上げたい。個人的な感情や行きがかりにとらわれて大局を見失うことは、政治家にとって大きな悪徳です。時代の潮流は、国際協調と新自由主義の克服に向かっています。戦争と貪欲の時代を終わらせたいと、世界の人々が願っているのです。日本でその流れを強めるために、平和と平等を基軸とする政治勢力をより大きなものにしようではありませんか。そのために社民党も歴史的決断をしてほしいと思います。(社会新報9月30日号)

http://www.yamaguchijiro.com/?eid=794

 社民党は90年代半ば以降、護憲のほかにNPOとフェミニズム、マイノリティの権利を中心的に唱えてきた。つまり、「新しい社会運動」と「アイデンティティ・ポリティクス」である。マルクス主義の凋落以降の左派が採用してきた戦略である。

 90年代以降、学者の間では「新しい社会運動」や「アイデンティティ・ポリティクス」をめぐる議論が盛んだったが、現実にはNPOが何のことやらわからない人のほうが依然として大多数であり、「アイデンティティ・ポリティクス」は「マイノリティ」に過剰に肩入れすることで、「マジョリティ弱者」からのバックラッシュを(あくまで部分的に)引き起こしただけであった。実際、社民党は無視できるような弱小政党のわりに、ネット上では過剰に大きく扱われて批判される傾向があった。

 社民党は「弱者」「マイノリティ」の味方を標榜していたが、社民党議員自身の「弱者」「マイノリティ」感のあまりのなさについて、反省する感性と能力に欠けていた。都市のキャリアウーマンや市民活動家といった、人によっては「社会的強者」と見られる層の代弁者であるかのようなイメージを、自ら修正しようとする努力も怠っていた。

 2006年以降の労働・雇用問題の盛り上がりも、あまり社民党の追い風にはならなかった。ネット上では左派に対する支持が部分的に回復したが、その中心は「新しい社会運動」では敵対関係にある共産党であって、社民党ではなかった。90年代後半降の社民党が労働問題に無関心になってしまったので、当然のことではあった。

  社民党は人文系の大学教員層に根強い支持がある(こう言ってはなんだが両者とも生活感のなさがそっくりである)ので、ある種の安定した支持率がある。だから全く消滅するということはないだろうが、これは「新しい社会運動」「アイデンティティ・ポリティクス」がほとんど人文系の知識人の間の内輪ネタで終わってしまったこと、その無残な失敗を意味するものに他ならないと思う。

 同じ左派系の知識人層でも、若い世代は「新しい社会運動」「アイデンティティ・ポリティクス」が経済弱者の問題にほとんど対応できていないことに対して、批判的な姿勢をとるようになっている。以上の経緯については、山口二郎氏も評論家的に批評するだけではなく、当事者として一定の責任があるはずだろう。

 私は山口氏とは逆に、「社民」を看板にする政党が残るほうが、望ましいと考えている。繰り返すように、社民党は少数派としての支持率は安定しているのであり、山口氏がやるべきは民主党が社民党を切り捨てないことを提言し続けることだろう。

 これからの社民党は、「新しい社会運動」の名の下に国家権力や経済の問題に無関心を装うことをやめること、そして「アイデンティティ・ポリティクス」の名の下に社会的弱者を「マジョリティ」と「マイノリティ」に分断しないことが重要である。そのためには、「大きな政府」や「福祉国家」を看板にし、国家権力と経済界の役割を積極的に認め、増税政策にもむしろ主導権をとるくらいの姿勢が必要になってくると考える。

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