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日本人は本当に「時間貧乏」なのか

【人生戦略の立て方】経済評論家・勝間和代 日本人は「時間貧乏」

私たちが、よりよい人生を過ごすため、人生には戦略が必要です。戦略とは、目標達成のために総合的な施策を通じて、資源を効果的に配分・運用する技術です。ここでいう資源とは主に、ヒト・モノ・カネ、そして情報ですが、「ヒトの資源」とは具体的に何を指すのでしょうか? それは優れた人材やその人が持っているスキルを指し、その人たちがどれだけの時間を目標達成のために使う必要があるかという、人の労働力・時間配分を意味するのです。

 常々、私が感じるのは、日本人が全体的に、自分に対しても他人に対しても、時間の使い方に対して無頓着な傾向があり、それが日本全体の「時間貧乏」を招いているということです。日本は金銭的には他の国に比べて貧乏ではないかもしれませんが、労働時間が長く、自由時間が短い、「時間貧乏」ではないでしょうか。

http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/090720/sty0907200325000-n1.htm

勝間氏は、精神論が多いビジネスエリートの中ではバランスのとれている良識的な人だと思っているが、こういう記事を読むと、やはり所詮は「ビジネス書」の世界の人だと感じざるを得ない。

日本人の労働時間の異常な長さは、「時間貧乏」だからではない。昔ながらの日本社会の労働慣行や煩雑な習慣も確かにあるとは考えるが、それに人件費の削減競争があまりに激しくなったことがプラスされたという点に問題を求めるべきである。とりわけ、ファミレスやファストフードなどの外食産業で働いてきた人であればわかると思うが、こういう店の店長たちは、時給に換算するとアルバイト以下の水準の賃金で、一日12時間以上働くことがほとんど当たり前になっている。勝間氏は、まさか日本人が「時間貧乏」だからそうなっている、とでも言うのだろうか。

長期不況と賃金上昇の鈍化によって日本社会の需要全体が伸びない中、民営化と規制緩和などの「構造改革」の流れの中で新規参入ばかりが増え、ファミレスやコンビニエンスストアなどは明らかに飽和状態になった。競争に打ち勝つためには、他社よりも魅力的な商品を提供するという正攻法だけでは、明らかに限界になっていた。そこで起こったのが人件費削減の競争であると理解することができる。

生産性が低いというのは、例えば一時間に数人しか客がこないのに深夜3時にコンビニエンスストアを延々と営業している、という風景を思い出せば十分である。コンビニ本部は、少しでも利益を上げたいがために、こうした過酷な労働を「契約」の名の下に強制している。「時間貧乏」を創り出している責任を求めるとすれば、しばしば「時間を有効に使え」と叱咤している企業家自身にあると言わなければならない。

「時間貧乏」という言葉が当てはまる場所があるとしても、勝間氏の所属するビジネスエリートの世界だけである。そして、そこにもおそらく人件費削減競争の力学が働いており、一部の優秀なビジネスマンが有り得ないような膨大な量の業務を超人的にこなしているという風景がある。実際、勝間氏がかつてまさにそうだったわけである。

生産性を向上させたいのであれば、いま起っている人件費の削減競争を緩和することが先決である。そのためには過酷な長時間労働を不必要にするような、公的な生活保障の仕組みを厚くしていくしかない。つまらないようだが、この当たり前のことでさえ世論になりそうな気配が全くないのが現状である。

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コメント

実は、勝間氏は最低賃金の引き上げ、貧困率低下の数値目標設定、正規非正規労働の待遇の均一化なども主張されています。
勝間氏は、新保守主義者に近い自民党関係者とも、雨宮カリン、湯浅誠氏といった左翼運動家とも親交があるとわけです。

投稿: とおりすがり | 2009年7月21日 (火) 02時17分

勝間氏も「過当競争の緩和」をちゃんと言ってますね。やはりさすがだなと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=i02giDeQdY8&feature=related
この文章でもそのことを指摘してほしかったですけど。

投稿: にょしん | 2009年7月21日 (火) 15時06分

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